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2020.11.20
Column
No.6「“体験価値”を高めるには」
『先日沖縄へ出張をした際の出来事になります。昼食をとろうと、ある飲食店に入りました。入ると食券機がありましたので、食券を購入したのですが、その食券をどこに出すのかがわからないレイアウトになっていました。ほんの少しだけキョロキョロすると、気づいていただいたお店の方がすぐに奥から出てきて食券を受け取りつつ、丁寧に席まで案内をしてくださりました。お昼の混雑時、かつ馴染みのないお店での対応に、うれしい意外性を感じて食事も一層おいしく感じることができました。
一方で同じ沖縄にいた際に、夜に入った飲食店でのことです。そこは先ほど記載した飲食店とは違い、少し高めの価格帯のお店でした。混雑をしている様子はなかったのですが、都度声をかけても人が出てくることが無く、オーダーするのが苦労いたしました。せっかくの素晴らしい食事も半減して感じられました。』
さあ、いかがでしょうか?決して沖縄出張した際の筆者のこぼれ話をお伝えしたいわけではございません。この実際に合った出来事からいろいろな示唆があることをお気づきいただけますでしょうか?
一つ目は、ホスピタリティ対応により体験価値が高められる、ということです。世間的には後者の飲食店のほうが名が通っているのだと思います。実際に料理そのものは大変素晴らしいものでした。一方、前者の飲食店は言い方は大変失礼ですが一般的な街の食堂であり、味も皆さまが想像する範疇を超えることはありません。ただ、私が「また来たい」と感じるのは前者の飲食店になります。「食事」という体験価値は「料理×対応×店の雰囲気」で上下するものであり、いかにハード面を整備してもソフト面でその大きくかかった投資費用を台無しにしてしまいかねないものになります。逆に考えれば、ハード面での課題点をソフト面で補う事も出来るのです。
二つ目の示唆は、価格帯やお店の外観などの事前期待値により、求める対応ハードルが上下する、ということです。人間というものは勝手なもので、同じ対応であったとしても、それが状況や相手により、抱く感情が変わります。また、生きてきた中で勝手に蓄積されたイメージがあり、例えば「安い=悪い対応・低品質」「高い=良い対応・高品質」というような図式が漠然と出来上がっている方も多いのではないでしょうか?だからこそ、この事前期待値を踏まえつつ、顧客対応を考えなければなりません。もちろん、過剰・過重対応となると費用対効果も悪くなる可能性がありますので、適切なレベルでの+αの対応をしなければなりません。となると、自社の事前期待値(≒ブランドイメージ)を適切に把握しておく必要が出てくることが重要です。
ホスピタリティ業界では生産性の低さを指摘される機会が良くあります。もちろん、従業員の方々が快適に働いていただくための環境整備を促進する必要はありますが、「非効率の効率」という考えの元、そのお客様への対応の非効率性が付加価値になるのではないでしょうか?その付加価値を価格に反映し、その価格に妥当性・納得性を持たせるよう事前期待値を把握して適切な対応力まで引き上げる。このようなサイクルが構築できれば、飛躍できるのではないでしょうか?