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No.42「“伝わる”ための“伝え”方」

 最近の研修依頼の内容で多いのは、「伝わる伝え方」です。

「新規のお客様とスムーズにコミュニケーションが取れない」
「部下に意図がうまく伝わらない」

と悩まれる方が多くいらっしゃいます。

 私どもでは、ホスピタリティの研修や講演で、「“伝える”と“伝わる”は違う」ということをよくお話ししています。どんなに一生懸命伝えても、相手にそれが伝わっていなければ意味がありません。結果としてこの「伝わらない」という現象は、接客・営業・社内で多くの摩擦や不協和音を発生させることから、よくご相談をいただくものでもあります。

 そもそもコミュニケーションの本来の意味は「自分と相手とで情報やデータ、想いなどが共通のものになること」であり、会話をすることはコミュニケーションを実現するための手法に位置付けられます。

 そう考えますと、伝わらなければコミュニケーションが実現できていないことになります。具体的に相手と伝えたい事を“共通のもの”にするためにいくつかポイントがございます。

 その中でポイントは「相手の頭に“像”を結ぶ話しをする」ことです。
情報の羅列でよく分からないものでも、“像”を目の前に提示されれば、しっかりと伝わります。例えば、設計士の方がつくる住宅完成模型。口頭や書面では伝わりにくいものでも、実際に立体模型という“像”にして見せることで、誤解のない、納得感のある打ち合わせが可能になります。例えば、イラストで描かれた会社のビジョン。ある女性中心の企画会社様では、会社のビジョンを社内イラストレーターの方が絵(カラフルな壁面の庭付き3階建の社屋と、そこに集う社員や社屋で遊ぶ子供たち)を使って“像”として描き起こすことで、社員に創業者のビジョンが共有化されています。

 話しに対して相手の頭に“像”を結んでもらうためには、大きく3つのポイントがあります。

【ポイント1】左脳と右脳を刺激する

正確な情報の伝達には、数値やデータなどの客観的情報が不可欠です。ただ例えば「人」を例にすると、身長・体重・血圧といった客観情報だけではその人をイメージできません。そこに性格・好みといった右脳を刺激する情報が付加されることで、その人の「人物像」がイメージされて来てます。特にニュアンスや人の感情にまつわる事柄には、左脳的情報に加えて右脳的情報を加えることで、話が質感を伴って立体性を帯び、結果として相手の頭に“像”が結ばれやすくなります。

【ポイント2】関係性を視覚で示す

多くの話には、その中の要素に関係性があります。
・AをやってからBをやる・・・。
・AとBの結果にCを足してDをやる・・・。
・Aが土台でBとCがその上に積み重なる・・・。
そういった関係性を、口頭だけで“像”としてイメージさせることは難しいものです。そんな時は視覚で示すことに取り組みます。
・身振り手振りを入れて示す
・身の回りにあるものを並べたり重ねたりして示す
・紙に図や矢印などを書いて示す
方法は他にも色々とあるでしょう。ただその際に大切なことは、話す本人が関係性を視覚的に説明できるぐらい、よく理解・整理できていることです。相手に視覚的に明示しようとすることで、自分の伝えたいことを整理することにもつながります。

【ポイント3】例え話を使う

相手の頭に“像”を結ばせる上で、あるいは相手が結んだ“像”が正しいものであるかを確認する上で、例え話も有効です。
・ビジネスマナーの重要性を「家の基礎工事」に例える
(どんなに上屋がきれいでも、基礎がしっかりしていないと地震や台風で倒れてしまう)
・ホスピタリティを「恋愛」に例える
(不満ではない・・・だけではなく、相手に好感を感じてもらえる行動によって、色々な人の中から自分を選んでもらい、繰り返し会ってもらえるようになり、浮気をしないで一生共にいられるようになる)

 なお気をつけなければならないのは、相手に分かる例え話を使うことです。年齢・経験・文化の違いによって共有できていないものを例え話にしても、相手の頭に“像”を結ばないどころか、単にギャップ感から「やれやれ・・・」と思われ、苦笑されてしまうだけ・・・などということもあります。日頃から、色々な事象を相手に合わせた例え話で説明する訓練も必要ですね。

 さて、果たして私のお話は、皆様の頭の中に“像”を結んでいただける内容だったでしょうか?